ここの旧校舎はヴォーリズという建築家によるもので、
歴史的価値の高い建築として知られている。
しかし最近では、また別の面で非常に有名になっている。
その筋の人で、このことを知らない人はいない。
アニメ「けいおん!」の舞台のモデルとしてだ。
かくいう自分も「けいおん!」は評価している。
娘であるめい4歳が「プリキュア」を見ると暴れまわって仕方が無いので、
少しでも影響を緩和させるために見せてみたところ、すっかり気に入った。
緩和させるという目的は…なんともいえないが。
絵柄やセリフまわしこそ、いわゆる典型的なアニオタ向けであるものの、
子供に見せる分には意外なほど悪くない。
その理由は
・エロや暴力など刺激的表現は皆無に等しい
・しょうもない恋愛観やら人生訓やらを押し付けるようなこともない
・タイアップ攻撃でおもちゃをねだられる心配もない
そんなわけで、けっこう安心して子供に見せておけるのだ。
話がそれたが、そんなわけで、めい4歳と、その豊郷小学校を訪れてみた。
結果は、
ある程度覚悟していたものの、やっぱり結構なダメージを負った。
まずいきなり駐車場で最初のダメージ。めいが気づく。
「わーあの車、女の子の絵が書いてあるー」
いわゆる痛車が並んでいた。痛車-Wikipedia
「そやね…」なんと返事していいかわからない。
コスプレをしている人たちも、結構いた。
アニメの話では、主役を始めおよそ5人の女子高生たちが中心人物である。
その5人組の衣装や髪型を真似たグループが、4組はいただろうか。
ただし、うち半分のグループは男だった……。
「あー、ゆいちゃんとみおちゃんと(キャラクターの名前)」
「うん、でもあれ男の人やね…」
なんだかとても辛い気持ちになって説明した。
髪型と、アニメに合わせた制服でコスプレは成り立つこともあってか、遠くから見る限りでは、ちゃんとしてれば男でも少々それっぽく見えるのが
なんだか余計悔しかった。
「クィア理論てのがつまりはこういうことなんだ」
などと難しい言葉を持ち出して、自分を無理矢理納得させた。
郷に入っては郷に従え。豊郷小学校に入ってはけいおん!ファンに従えだ。
しかしながら、校舎は最初にも触れたとおり、本来は歴史的建造物としての価値が
認められているものだ。
だから、教室の一部は校舎に関する資料を集めた展示室もある。
そしてまた、別の教室は近隣の子供のための施設として使われてたりもする。
訪れたときには、どこかの中学か高校生くらいの団体が教室を借りて
ブラスバンドの練習をしていた。
そんなわけで、豊郷小学校旧校舎という一軒の建物に、
・アニメファンの聖地
・歴史的建造物としての観光名所
・近隣の住民のための施設
という3つの世界が入り交じっていて、当然訪れる客も、ほとんどがアニメファンではあるものの、そのなかにおじいちゃんおばあちゃんも混じっており、更にはアニメファンも、ウチのような子連れも結構多く、年齢層というか人種も幅広い。
だから全体として、なんだか異様な印象を受けた。
全員が、お互いに対して、場違いじゃね?(他人が、あるいは自分が)
と感じているようにも見えた。
とは言え、建物にはなんの罪もない。
さすが、一時は取り壊されかけたのを全力で止められただけはある。
校舎自体、アニメと関係なくとも非常に魅力的だった。温かみのある、こんなところで勉強できた小学生は幸せだったな、と思える作りだった。
アニメの方は、もう終了みたいなので、また徐々に、本来の歴史的建造物の顔にもどっていくのかも知れない。
しかし、あのカオスな雰囲気、ワケの分からない辛さ、申し訳なさ、悔しさがごっちゃになったような気持ちも、一度だけなら味わっておくのも、そんなに悪くはないかもしれない…かもしれない…かも…と思った。
これで、東京に行っても、一度は秋葉原に行ってみようなんて
危険な好奇心は起こさずにすむ。
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